「学校に行けない」は甘えじゃない。不登校を正しく理解するために知っておきたいこと
「また今日も行けなかった」「なぜうちの子だけ…」——そんな思いを抱えているご家族、そして毎朝布団の中で体が動かない自分を責めているあなたへ。不登校は、意志の弱さでも親の育て方のせいでもありません。この記事が、少しだけ心を軽くするきっかけになれば嬉しいです。
「行きたくない」の裏側にあるもの
2023年度の文部科学省調査では、不登校の小中学生は34万6,482人と過去最多を更新し、高校生を合わせると41万人超に達しています(※1)。今や不登校は特別なことではありません。「行きたいのに行けない」という状態は、心と体が限界を知らせているサインです。まずはその背景にある理由を理解することから始めましょう。
不登校になった理由 3選
※文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」より抜粋
1. 対人関係・いじめによるストレス
友人関係のトラブルやいじめは、学校という場そのものを「危険な場所」として認知させます。繰り返される社会的脅威は脳機能の慢性的な活性化を招き、登校そのものへの回避行動として現れます(※2)。文部科学省の委託調査(子どもの発達科学研究所、2024年)では、当事者・保護者へのアンケートでいじめ被害が26.2%に上り、学校側の認識(0.3%)とは大きな乖離があることも報告されています(※3)。「気にしすぎ」ではなく、脳と体が自分を守ろうとしている反応です。
2. 不安・抑うつなど精神的な不調
「行こうとすると腹痛がする」「朝になると涙が出る」といった身体症状は、心理的苦痛が身体化したもの(身体化症状)です。分離不安症、社交不安症、うつ病などの精神疾患が背景にある場合があります。「仮病」ではなく、治療と支援が必要なサインです。
3. 発達特性による学校環境との不適合
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)などの神経発達症のある子どもにとって、一般的な学校環境は、その場にいるだけで辛く感じたり、うまく行動できないことがあります(※4)。さらに、そうした特性から生じるつまずきや失敗の積み重なり、周りからの理解のない言葉や指導を受けることで、自信を失い、ますます生活がうまくいかない状態(二次障害)を招くことが指摘されています(※5)。「努力が足りない」のではなく、環境と特性の間にミスマッチが生じている状態です。
望ましい対応——焦らず、責めず、寄り添う
上に挙げた不登校の理由とは、原因を明らかにしようと調査されたものですが、私たちが実際の不登校支援の現場に身を置いていると、
「これといった原因はない(わからない)」
という声がとても多く聞こえます。「むしろ、いじめられたとかはっきり原因があれば対応できるのに。」と悩む保護者の方の声もたくさんお聞きします。もう歩けない、となる原因は一つではありません。気付いていることも気付いていないこともあるでしょう。すぐに解決できるもの、ゆっくりひもといていくもの、など対応も様々です。
それでも、学校がつらいというSOSを出してくれたときには、まず「受け止める」ことから始めましょう。「どうして行けないの」より「つらかったね」の一言が、子どもの心を開くきっかけになります。
回復には時間がかかります。なぜなら、それまでとても長い時間がんばって、たえてきたからです。「いつ行けるの」というプレッシャーは逆効果になることもあるため、焦らず待つ姿勢が大切です。スクールカウンセラー、教育支援センター、児童精神科など、専門家に頼ることも重要です。一人で抱え込まなくていい。そして、フリースクール・通信制・オンライン学習など、学びの形は一つではありません。その子に合った場所を一緒に探していきましょう。
おわりに——不登校は「怠け」でも「甘え」でもない
不登校の子どもたちは、誰よりも「行きたい」という気持ちと格闘していることが多いのです。学校に行けないことは、その子の失敗ではありません。 むしろ、限界まで頑張ってきた証です。
保護者のみなさんも、責任を感じすぎないでください。あなたが子どもの隣にいて、「大丈夫だよ」と伝え続けることが、何よりの支援になります。私たちは、子どもたちの「一歩」を焦らず、責めず、その子のペースで支えていきたいと思っています。どうかひとりで抱え込まず、いつでも声をかけてください。
参考文献・出典
※1 文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(2024年10月公表)
※2 社会的ストレスとHPA軸の慢性活性化・回避行動の関連:McEwen, B.S. (2007). Physiology and neurobiology of stress and adaptation: Central role of the brain. Physiological Reviews, 87(3), 873–904.
※3 公益社団法人 子どもの発達科学研究所「不登校の要因分析に関する調査研究報告書」(文部科学省委託、2024年3月公表)
※4 国立特別支援教育総合研究所「発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究」(2020年)
※5 日本ヒューマン・サービス総合研究所「学校教育領域における不登校・発達障害への支援に関する研究」(2020年)
※6 小児期逆境体験(ACE)とPTSD・自傷・うつ病との関連、ヤングケアラーとトラウマの側面:教育新聞「ユースの心と命を大切にする(7)逆境体験・トラウマ・ヤングケアラー」(2023年6月)
本記事の心理・医学的な説明は上記研究・調査に基づきますが、個々のケースについては必ず専門家にご相談ください。

