成人後の発達障害診断 ——学校在籍中に始められる準備

「もしかして自分は発達障害かもしれない」——そう感じたとき、学校在籍中に準備を始めることで、進学・就職のスタートラインをより安心して迎えられます。このブログでは、学校・家庭でできる具体的な準備を7つのテーマでお伝えします。

 

1|なぜ「成人後診断」が増えているのか

近年、20〜30代になって初めてADHDや自閉スペクトラム症(ASD)などの診断を受けるケースが顕著に増加しています。背景には、社会的認知の広まりと診断基準の変遷があるように思われます。

かつては「目立つ多動」が診断の主な入口でしたが、DSM-5(2013年)以降、不注意優勢型ADHDや女性・女子に多い内在化された特性も正式に評価されるようになりました。学校生活では「がんばればできる」「少し変わった子」として過ごせていた方が、大学入学・就職・一人暮らしの開始などで、急激に生活環境が変わった際に、自分の課題が表面化し、受診を決意するパターンが典型的です。

また、スクールカウンセラーや支援機関の普及により「相談できる場所」が増えたことも気づきのきっかけになっているでしょう。

 

2|学校在籍中に診断を受けるメリット

「高校生のうちに診断を受ける必要があるの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、在籍中に診断を受けることには、大きな利点があります。

 

🤝 「自分のことを知る力」と「助けを求める力」を育てられる

 診断は「自分がダメだという証明」では決してありません。自分がどんな場面で困りやすいのかを言葉にして、「こういうサポートが必要です」と自分から伝えられるようになるための、大切なきっかけになります。

💊 薬やカウンセリングによるサポートを早めに始められる

ADHDの場合、症状を和らげる薬(コンサータ・ストラテラなど)が処方されることがあります。早い段階から始めることで、勉強や日常生活がぐっと楽になることがあります。自分に合う薬を探す、薬との付き合い方を見つけるなども、学校や家族のサポートを受けられる時期にできると心強いですね。

📋 高校から進学先への「サポートの引き継ぎ」がスムーズになる 

高校在学中の記録(どんな配慮を受けていたかなど)があると、大学・専門学校でも同じようなサポートを続けてもらいやすくなります。

🎓 大学入試や共通テストで「特別なサポート」を申請できる 

試験を受けるとき、時間を延長する・別の部屋で受験する・マークシートの代わりにチェックで答えるといったサポート(合理的配慮)を受けることができます。これには、診断書と学校からの申請書類が必要なので、高校在学中に準備しておくことが大切です。

 

3|診断に必要な情報——今から集めるべきもの

発達障害の診断は、現在の困りごとだけでなく、幼少期からの発達歴・生育歴が重要な根拠になります(特にASDやADHDは「症状が12歳以前から存在する」ことが診断基準のひとつ)。

 

📁 受診時に持っておきたい情報リスト

  • 母子手帳(発達の記録、乳幼児健診の所見)
  • 小学校・中学校の通知表、連絡帳(先生からのコメント)
  • 過去の知能検査・発達検査の結果(WISC・田中ビネー等)
  • 幼少期のエピソード記録(保護者が覚えている困りごと・特性)
  • 現在の困りごとを具体的に書き出したメモ(場面・頻度・影響)
  • 学校での支援の経緯や担任のコメント(在籍中に学校へ依頼可能)

 

ポイント:これら全てをそろえないと困る、というわけではありません。

「あの頃こんなことがあった」という保護者の記憶は、診断においてきわめて重要な情報です。曖昧でも構いません。受診前に振り返っておくと良いでしょう。

 

4|受診先の選び方と予約のポイント

発達障害の診断は、すべての医療機関で受けられるわけではありません。適切な受診先を選ぶことが、スムーズな診断につながります。

 

🏥 18歳未満の場合(児童精神科) 高校生のうちは児童精神科・思春期外来を優先して探すと良いでしょう。

🏥 18歳以降の場合(精神科・心療内科) 「発達障害の診断・支援に対応している」と明示している医療機関を選びましょう。

🔍 探し方 発達障害者支援センターや都道府県の医療機関リスト、かかりつけ医からの紹介状を活用すると確実です。

 

📞 予約・受診前のポイント

  • 初診の予約は数ヶ月待ちのこともある。早めに動く
  • 「発達障害の診断を希望している」と予約時に明示する
  • 心理検査(WAIS・CAARS等)を行う医療機関かどうか確認する
  • 生育歴・発達歴をまとめたメモを持参する

 

5|診断後の学校生活——合理的配慮の申請

診断が出た後、学校に「合理的配慮」を申請することができます。これは障害者差別解消法(2016年施行・2024年改正で私立校にも義務化)に基づく権利です。

合理的配慮とは、障害のある生徒が他の生徒と同等に教育を受けられるよう、学校が提供する個別の調整・支援のことです。「特別扱い」ではなく、「スタートラインをそろえるための調整」です。

 

📝 学習面の配慮例 試験時間の延長・別室受験・ルビ対応・タブレット使用許可など

🗓️ 環境面の配慮例 座席位置の配慮・口頭指示と書面指示の併用・感覚過敏への対応など

📬 申請の流れ 担任またはSCへ相談 → 診断書の提出 → 学校との「合意形成」 → 支援計画の作成

 

大学受験での配慮申請:共通テストでは、高校から文書で申請・推薦が必要です。診断書取得後、早めに担任・特別支援コーディネーターへ相談しましょう。締切は試験の数か月前と、多くの人が想定より早いとおっしゃることが多いので気をつけましょう。

 

「知ること」は、力になる

診断は、あなたの可能性を制限するものではありません。自分の特性を知り、必要な支援を受けながら、自分らしい将来を切り拓くための一歩です。

人生の歩み方は、ひとつではありません。小・中・高校の時代は、多くの生徒が同じ場所でともに学ぶ場として、一定の枠組みが用意されています。間違えたことを正してくれる先生、学ぶ順番を示してくれるテキスト——「この道を進んでいけばいい」という道しるべが、学校にはあります。その枠組みがあなたには辛く、困惑したり、混乱したり、ただその生活に耐えることで精一杯だとい日々だったかもしれません。

しかし、学校を卒業した後、自分がどう生きていくかを教えてくれる人はいません。「好きなことをすればいい」と言われても、学生時代に大勢向けの枠組みに合わせることに精一杯で、自分の好きなことや得意なことをじっくり探す余裕がなかった人にとって、それはとても難しく感じられることがあります。それでも社会での生活は始まります。慣れない環境のなかで自分の特性と折り合いをつけていくのは、一人では容易ではありません。

社会には、優しい人がたくさんいます。助けを求めれば、あたたかく応えてくれる人も必ずいます。ただ、「どうやって助けを求めればいいか」が分からないと、そのドアを開くことはなかなかできません。学生時代は、家族・学校・医療・福祉など、あなたをサポートしてくれる人や制度が身近にある、かけがえのない時期です。

不安なことや気になることがあれば、どうかひとりで抱え込まずに、いつでも学校へご相談ください。

 

【参考資料】

  1. 厚生労働省(2024)「令和4年 生活のしづらさなどに関する調査」
  1. 文部科学省(2022)「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」
  1. 日本学生支援機構(2023)「障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書(令和4年度)」
障害のある学生の修学支援に関する実態調査 | JASSO

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の公式ホームページです。

  1. 内閣府(2024)「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」
  1. 文部科学省(2024)「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」
  1. 厚生労働省「発達障害者支援センター一覧」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hattatsu/soudan.html

  1. 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)の概要」
自立支援医療 |厚生労働省

自立支援医療について紹介しています。

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