「将来の夢は?」に答えられなくても大丈夫です。今は、見つけるための大切な時期
「うちの子、将来の夢がないみたいで…」
保護者の方から、こうしたご相談を受けることがあります。進路の話題が増える高校生の時期は、お子さんが答えられずにいる姿を見て、焦りや不安を感じられるのも自然なことです。
結論から申し上げます。この時期に夢や目標がなくても、心配しすぎる必要はありません。
「夢がない」は「やる気がない」ではありません
夢が決まっていない生徒には、さまざまな理由があります。
- 興味の幅が広く、一つに絞れない
- 可能性を狭めたくないと、慎重に考えている
- 心を動かされる分野に、まだ出会っていない
- 大人から「夢は?」と聞かれること自体に、抵抗を感じている
どれも「意欲がない」こととは別のことです。むしろ、自分の将来を真剣に考えているからこそ、簡単に答えを出せないのかもしれません。
青年期の発達課題は「自分探し」です
心理学者のエリクソンは、青年期の中心的な課題を「自分とは何者か」を確立していくこと(アイデンティティの形成)だと述べました。そしてその過程では、いろいろな可能性を試しながら、自分に合うものを探す時期(探索期)が欠かせないとされています。
つまり、夢が見つかっていない状態は、成長の途中経過です。反対に、十分に試す前に「とりあえず」で進路を決めてしまうと、入学後や就職後に「思っていたのと違う」と感じやすくなる場合があります。
自分で選んだという納得感は、壁にぶつかったときの粘り強さにもつながります。
「親が提案しても響かない年ごろ」だからこそ
この時期のお子さんは、自分のことは自分で決めたいという気持ちが強くなります。保護者の方が良かれと思って提案しても、内容にかかわらず、素直に受け取れないことがあります。これは反抗ではなく、自立に向かう自然な反応です。
「まだ決まってないの?」「あの仕事はどう?」といった言葉は、お子さんの中で「決められない自分はダメなのかも」という気持ちにつながることもあります。もし声をかけるなら、次のような問いかけがおすすめです。
- 「最近、ちょっと面白いと思ったことはあった?」
- 「どんなときに時間を忘れる?」
答えが返ってこなくても、それで十分です。「聞いてもらえる」という安心感が、少しずつお子さんの心を開いていきます。
だからといって、放っておいてよいわけではありません
ここで大切なことがあります。焦らせない、急かさないことは、何もしなくてよいという意味ではありません。
「好き」は、頭で考えるだけでは生まれません。実際に見て、聞いて、触れて、体験して、はじめて「あ、これ好きかも」「これは合わないな」という小さな気づきが生まれます。その積み重ねが、やがて進路の軸になっていきます。
探索期に必要なのは、答えを急がせることではなく、気づきが生まれる出会いの機会を、大人が意図的に用意することです。
私たちが、「あ、これ好きかも」に出会わせます
本校では、生徒一人ひとりの歩みに寄り添いながら、学校の内外にあるさまざまなつながりを活かして、多様な体験や人との出会いの機会をつくっていきます。
- いろいろな分野の大人と出会い、話を聞く機会
- 学校の中だけでは触れられない、多様な体験の場
- 日々の対話を通じて、「何を感じたか」を一緒に振り返る時間
大切にしているのは、「役に立つか」ではなく、「興味が動くか」です。回り道に見える経験も、探索期にはすべて意味があると考えています。
おわりに
進路の答えは、今すぐ出なくても構いません。選んだ道が、唯一の正解でなければならないわけでもありません。
今のお子さんに必要なのは、「まだ決まっていなくて大丈夫。一緒に探していこう」という大人のまなざしです。ご家庭ではお子さんを信じて見守っていただき、出会いの場づくりは、私たち学校にお任せください。

