「つい先回りして、手を出してしまう」。 「本人に任せたいけれど、また傷つくのではと心配になる」。
そんな思いを抱えている保護者の方は、少なくないと思います。
よく「高校生になったら、あとは本人に任せることが大切」と言われます。 けれど、発達特性や心身の不調があるお子さんと歩んできたご家庭にとって、それは簡単なことではありません。
手を貸してきたのには、きちんと理由があります。 今回は、過干渉・過保護になりやすい状況をふり返りながら、少しずつ手を離していく「練習」について考えてみます。
過保護と過干渉、そのちがい
似た言葉ですが、少し意味がちがいます。
過保護は、本人ができることや、やってみたいことまで、先に引き受けてしまう状態です。 過干渉は、本人が決めることを、大人の考えで決めたり、細かく指示したりする状態です。
どちらも、出発点は「わが子を守りたい」という気持ちです。 責められるものではありません。
ただ、その状態が長く続くと、お子さんが「自分で選ぶ」「自分でやってみる」機会が減ってしまうことがあります。
手を離しにくくなる、よくある状況
これまでにつらい経験があったとき
学校に行きづらかった時期や、人間関係で傷ついた経験があると、「もう同じ思いをさせたくない」と感じるのは自然なことです。 その結果、つまずきそうな場面を前もって取り除きたくなります。
体調や気分に波があるとき
昨日はできたことが、今日はできない。 そんな日が続くと、どこまで任せてよいのか判断が難しくなります。
見通しを立てることや、伝えることに苦手さがあるとき
予定の管理や、困ったときに人に伝えることが苦手なお子さんもいます。 すると、保護者が「通訳」や「マネージャー」の役割を担うことが増えていきます。
保護者ご自身が、ひとりで抱えているとき
相談できる相手がいないと、不安が大きくなります。 「自分がやらなければ」という思いが強まるのは、とても自然な流れです。
どれも、お子さんを思うからこそ生まれる状況です。 多くの保護者が感じている本音は、「いつまでも続けたいわけではない。でも、終わらせ方がわからない」ということではないでしょうか。
少し手を離す「練習」
手を離すことは、一度に「全部任せる」ことではありません。 小さく、少しずつ試していく練習だと考えてみてください。
1. 手を出す前に、ひと呼吸おく
困っている様子が見えても、すぐに声をかけずに少しだけ待ってみます。 お子さんが自分で考え始める時間になるかもしれません。
2. 指示ではなく、問いかけや選択肢に
「こうしなさい」の代わりに、「どうしたい?」「AとB、どっちにする?」と聞いてみます。 本校が大切にしている「選ぶ力」は、こうした小さな選択の積み重ねから育っていくと考えています。
3. 任せる範囲を、具体的に決める
最初は、失敗しても取り返しがつく小さなことから始めます。 たとえば、翌日の持ち物の準備や、自分の昼ごはんを選ぶことなどです。 慣れてきたら、病院や美容院の予約を自分で電話して取る、といった少し先の一歩にも挑戦してみてください。
4. 結果より、取り組んだことに目を向ける
うまくいかなくても、「自分でやってみたね」と伝えてみてください。 挑戦したこと自体が、次の一歩につながります。
5. 失敗したあとを、一緒にふり返る
失敗を防ぐことより、失敗のあとに「どう立て直すか」を一緒に考えることを大切にします。 うまくいかない経験と、そこから立ち上がる経験が、お子さんの力になっていきます。
6. 保護者ご自身の気持ちにも目を向ける
手を離すと、心配や落ち着かなさを感じるのは自然なことです。 「今、自分は不安なんだな」と気づくだけでも、少し余裕が生まれることがあります。 その気持ちは、誰かに話してよいものです。
特性は「その人らしさ」の一部
苦手なことがあると、つい「できるようにしてあげなければ」と感じます。 けれど、得意なことも苦手なことも、お子さんを形づくる大切な一部です。
苦手なことは、なくすことよりも「今より少しラクに向き合える方法」を見つけることが大切だと考えています。 その方法は、本人が自分で試してみる中で見つかることも多いのです。
見守ることは、放っておくことではありません
手を離すことと、放っておくことはちがいます。 すぐ近くで様子を見ていて、必要なときには手を差し出せる。 それが「見守る」ということだと、私たちは考えています。
Hearth Academy高等学院では、日々の生活や特別講座の中で、お子さんが自分で選び、試し、ふり返る機会を用意しています。 そのうえで、保護者の方が手を離しにくい理由を一緒に見つめ、お子さんに必要な力を伸ばす方法を考えていきます。
また、お子さんへの支援と同じくらい、保護者の皆さまとの対話を大切にしています。 手を離すときには、不安もゆれる気持ちも出てきます。 そうした気持ちごと、私たちと共有していただければと思います。
まとめ
過干渉や過保護は、お子さんを大切に思う気持ちから生まれるものです。 手を離すことは、その気持ちを手放すことではありません。
小さなことから、少しずつ。 うまくいかない日があっても大丈夫です。 お子さんと保護者の方、それぞれのペースで練習していけばよいと考えています。
ご家庭での関わり方に迷ったときは、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。 見学や個別のご相談は、いつでも受けつけています。

